手の触覚

まだ私が駆け出しの頃にお客様がつぶやいた一言。
それが思い出されるようになりました。

手の触覚?

「手の触覚なんだよ!」

これ私が新橋赤レンガ通りにあった整体のお店に勤めていた時に、常連だった久松さんというお客様に何回も何回も言われた言葉です。

なんの事かわかりますか?
わかりませんよね。

整体の施術の話なんです。
 


当時24才の私、整体の仕事をはじめたばかりで
施術はとにかく教えてもらったとおり習ったとおり、順番どおりに施術をするのに必死でした。

今でも鮮明に覚えていますが、一番最初にお客様を施術する時なんて緊張して手が震えましたよ。

言うことだけは大きいので、当時の新橋赤レンガ通り店院長に「口だけ大将」なんていわれてました。(何もわからなかった私にたくさんのことを教えて下さった人でとても感謝している人物)

そのお客様には初めてですって言わなかったんですけど、バレてなかったでしょうか。

でも施術は直接体に触れるので、緊張しているのは伝わっていたかもしれないですね。

思い出すととても懐かしいですが、
整体の施術は基本の形があり、それにそれぞれの症状などにあわせ施術を組み立ていく、というやり方です。

もちろん今は考えずに勝手に体が動き施術をしていますが
その頃はただやらなくてはいけない技術を手順通り抜かさないようにやるという
整体の技術の順番ばかり考えながら施術していたのです。

これをやったあとはこれをやる、この次はこれをやってこれも入れるみたいな感じです。

だから施術後は「ああ、あそこであの施術をするの忘れてしまったな」
なんてことが施術後の反省点として出てきていたぐらいです。

そんな状態で施術していたのでそのお客様に、

「整体は手の触覚だよ」 なんて言われても私の頭の中では
「え? は?」 という様な状態でした。

そして当たり前ですがとてもマニュアル通りな施術だったと思います。
 
日焼けした鈴木

 

手の触覚現る

 
しかしそんな私でも何回も何回もいろいろな方の体に触れていると
ある時その「手の触覚」がでてきたのです。

「ああこの人はここが悪いな」 とか

「さっきよりだいぶ緩んだな」 や

「ここがもう少し良くなると痛みがとれてくるな」

などというのがわかるようになってきたのです。

そしてとても手前味噌なのですが
自分の店を開院してからその感覚がさらに研ぎ澄まされた感じもするのです。

だからマニュアル通りの施術ではなく
その方にあった最適の施術を提供できるという自信もあります。
 


 

「手の触覚なんだよ!」

この言葉を聞いてからずっと頭の片隅にあって今でも忘れてないんですよね。

こんな記憶に残る言葉を言ってくれたお客様の久松さんに今でも感謝です。

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